tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

分裂の原理、統合の原理

2017年07月24日 13時06分17秒 | 国際関係
分裂の原理、統合の原理
 戦後、世界は統合の原理で動いてきたように思います。ところが、戦後70年を過ぎて、最近は、何か一部に分裂の原理が働いてきている様に感じられます。

 自由主義主要国の戦後の意識の中には、国際連盟に代えて国際連合(国連)を組織し、改めて世界を新秩序の中で統合していこうという基本的なものがあったと思います。

 しかし現実は国連の常任理事会の舞台で、世界の統合を考えるべき常任理事国の中で米ソ対立が深刻化し、世界は鉄のカーテンで仕切られました。
 しかし自由世界の中では統合の過程が進行していたのは確かでしょう。

 象徴的なのはEUです。ベネルックスの関税協定、欧州炭鉱鉄鋼共同体といった組織の面、フランスとドイツは今後絶対闘ったりしないという強い合意もあり、イギリスも巻き込んでEEC、EC、EU、と発展していきました。
 アメリカ大陸では米州機構が生まれ、アジアではASEANが生まれました。

 現象面で、統合の原理が最初に崩れたのは1990年のソ連の崩壊でしょう。これは共産主義国家の破たんという、ある意味では必然性を持ったものでした。
 ですから、これで世界が自由経済主義、民主主義で一色で統合の方向が進むかと思った人も多いと思います。

 しかしその後次第に様子が変わってきました。
 EUは人の移動の自由が、難民・移民問題と重なって、問題が深刻化しています。もともと難民や移民が大量に発生するという状態の方が問題なのですが、国連の常任理事国の権力争いが途上国の内紛に影を落とすという残念な状況の反映です。

 一方、アメリカは、経済的な理由で統合よりも自国の保護優先の姿勢を強めることになりました。
 統合・結束を進めようとする動きが依然として活発なのはASEANぐらいでしょうか。

 
 地球市民の共生と発展を考えるとき、分裂よりも統合の方が合理的であることは容易に理解できるでしょう。それは個々人の人間関係でも国と国の関係でも基本は同じでしょう、社会を作る動物「人間」は、孤立よりも、協力によってより良い成果を享受できるのです。

 70年この方、統合の方向を目指してきた地球市民の一部で、分裂・孤立を善しとする動きが出てきたという事は、人間の心に内在する「我儘」がそうさせるのでしょう。
 統合を望む社会では、自分の意志と同時に、他人の意思も「忖度」(良い意味の)が必要です。これは人倫というべきものかもしれません。

 しかし、場合によっては自己を抑え共生を優先することは、個人にも国にもある程度の不満を齎します。統合の仕方などで、統合指向と個人あるいは国の意識・不満のバランスが崩れると、時に不満が強まり、分裂への指向が生じるのでしょう。

 個人の生涯でも、世界の歴史でも、人類は時に「我儘」を優先して失敗を繰り返し、反省して統合の方向を目指すという事を繰り返してきているようです。

 最近の一部国家に見られる分裂志向が、過去の教訓を忘れた一時的な誤りの類で、出来るだけ早期に分裂、孤立の愚を悟り、改めて統合の方向が正しいことに気づくことが望まれます。

 その点、アメリカの行動様式、多国間協議を嫌い二国間交渉でという形は、統合を嫌いながら、孤立も嫌で、二国間で実を取るという思惑が垣間見え、覇権国のとる態度としては、些か「 NGR」意識に欠けるように思われるところです。

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